Skip to content

着付けは、「これで完成」が存在しない。凝ろうと思えば、どこまでも凝ることができる。例えば、衿の抜き方、半衿の幅、補正の調整、お太鼓の大きさ、さらに苦しさの軽減方法、腕や脚の可動域…など思いつくだけでもより美しく、快適に着物を着るためのスキルは無限に存在する。しかし、着物を着たい人全てがそれを目指すべきかと言えば、必ずもしもそうとは限らない。

着付けをひと通り学び、とりあえず腰紐が緩むことも帯のお太鼓が落ちることもなく出かけられるようになったとする。着物を洋服の延長で考えているケースや、普段着としてラフに着ることを目指している場合は、それで十分だろう。あとは、コーディネートやより実現したいファッションに即した着付けを追求していけば良く、着付け技術そのものを磨く必要性は薄まっていく。(スピードは必要になるかもしれないが、それは回数により自然に身についていくものである)

ただ、着物の佇まい、着姿の美しさに憧れて着付けを始めた場合は、ひと通り着付けができる状態の自分を鏡でまじまじと見つめ、「衿合わせがなんかダサい」「おはしょりがもこもこしてる」など、気になるところが次から次へと目につき、せっかく着物でお出かけしても、つねに衿やおはしょりが気になってしまい、「次こそはもっと納得のいく着付けをしよう」と研究を重ねることになるだろう。

つまり、ひと通り着付けできるようになった先のスキルについては、自分の「なりたい姿」に合わせて調整すれば良く、だらしない着方をしているからといって、必ずしも着物を軽くみているとか、着物を分かっていないとか、そんな風に謂われる筋合いもないのだ。

Back To Top